『風に恋う』番外編「ジョックロックに笑え」

「小説現代」に『風に恋う』番外編が掲載中です

好評発売中の「小説現代 2018年7月号」(講談社)に、『風に恋う』の番外編「ジョックロックに笑え」が掲載されています。
「読み切り特集 青春小説 野球vs.サッカー」として依頼をいただき、担当編集の、

「ぜひ野球応援を題材にした吹奏楽モノを」

「『風に恋う』の刊行時期と近いので、番外編というのもアリです!」

という提案から生まれた短編です。他社の本なのにありがとうございます……。

タイトルにある「ジョックロック」とは、智辯学園和歌山高校吹奏楽部が高校野球の応援曲として演奏する有名な曲です。

『風に恋う』本編では吹奏楽部のOBであり、25歳のコーチとして登場する不破瑛太郎の高校時代の話を書きました。千間学院高校吹奏楽部の部長として全日本コンクールを目指す瑛太郎が、野球部の元エースに頼まれて野球応援をする……という内容なのですが、主人公は瑛太郎ではなくこの元エースの方でございます。
高校時代の瑛太郎はあまりに無敵すぎて、「駄目だ、こいつは主人公になれない」と判断した結果ですね。

野球部の元エースの視点から描かれる瑛太郎の高校時代を楽しんでいただけたら嬉しいです。

『風に恋う』は単行本312ページの物語なのですが、これに収めきれなかったエピソードが大量にあります。
特に瑛太郎の高校時代は、プロットの段階ではもっとたくさんのエピソードがあったのですが、半分近くを泣く泣くカットしてしまいました。

デビュー作『屋上のウインドノーツ』と違い、『風に恋う』に登場する千間学院高校(千学)の吹奏楽部は部員数63人というなかなかの大所帯で、彼等が挑む吹奏楽コンクール高校A部門は最大で55人の部員が演奏できるので、ページ数の制約で描くことのできなかった登場人物が大量におります。

あれもこれも書きたかったし、あいつのことも彼女のことも書いてみたかったけれど……という惜しい気持ちもあるのですが、磨きに磨いたおかげで『風に恋う』はいい物語になったと思います。