*これは3/22発売予定『拝啓、本が売れません』(額賀澪/KKベストセラーズ)の試し読みです。
作家デビューをしてから、かつての自分のような作家志望の方々と話をする機会が増えた。例えば大学の後輩だったり、講演会に来てくれた人、「文芸部で作家を目指して小説を書いてます!」という高校生とか。
そのとき、いろんな人からよく聞かれる「あるあるの質問」というのがある。
「編集さんって、やっぱり怖いんですか?」
これだ。
作家にとって編集者は欠かせない存在だから、聞きたくなるのもよくわかる。私も作家志望だった頃、編集者という未知の存在に勝手にさまざまな想像を膨らませ、勝手に恐れおののいていたから。
「こんな小説、話になりません。ボツです。一から書き直してください」とか言いながら原稿を目の前でシュレッダーにかけちゃったり。
「お前、本出したいんだよな? なら俺の言う通りにやればいいんだよ!」なんて怒鳴りながら、作家の書きたいものを書かせなかったり。
「どうせ作家なんて掃いて捨てるほどいるんだから」と作家を使い捨てたり。
「内容なんてどうでもいいから。売れればいいの、売れれば」と売り上げにしか目が行ってなかったり。
……という感じで、悪い方に想像力を膨らませれば膨らませるほど、こういった悪魔みたいな編集者像ができあがる。運良く作家デビューできたとして、こんな編集者ばっかりだったらどうしよう……。なんてことを考えていたのだ。
作家デビューして、似たようなことを考えている人が多いことに驚いた。
もしかしたら先に挙げたような編集者は実在するかもしれない。しかし幸いなことに、私はこのような編集者には出会ったことがない。もしかしたらめちゃくちゃ《担当編集者運》に恵まれているのかもしれない。
というわけで、作家が小説を書く上で書かせない《担当編集》という存在について、ここではまず書いていきたい。
(『拝啓、本が売れません』 一章「平成生まれのゆとり作家と、編集者の関係」より一部抜粋)