7月20日に中央公論新社より新刊『モノクロの夏に帰る』が発売されます。
作中に登場するさまざまな物語の欠片を散りばめた、夏にぴったりな爽やかなカバーを作っていただきました。本文はもちろん、目次や中扉も素敵なので、デザイン面でもぜひお楽しみください。
戦時中のモノクロ写真をカラー化した写真集が作られ、とある書店員がそれを自分の店に並べ、それを読んだ保健室登校の中学生が読書感想文を書こうとし、ワーカホリックのテレビマンが戦争特番を作ろうとする――。
2020年に刊行され大ヒットした『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』(著/庭田杏珠、 渡邉英徳 光文社新書)をモチーフに、1冊の写真集をきっかけに、登場人物が自分の日常と戦争を重ね合わせる物語を書きました。
この記事を書いているのは2022年7月11日ですが、毎日いろんなことが起きます。
新型コロナが日本で感染拡大し始めたとき、「歴史の教科書に載るようなどんでもないことが起きた……」と思いました。今年の2月24日にロシアがウクライナに侵攻し始めたとき、同じことを思いました。7月8日も、やはり同じことを思いました。
1945年8月15日に太平洋戦争が終結して、自分は当たり前に戦後を生きている気分でいましたが、実はそうではない。
日常は当たり前ではなく、繋ぎとめる努力をして守るものであること。守るべき手段は、戦争でもテロでも殺人でもないこと。目の前を生きる他人を思いやって尊重することであると。そんな綺麗事に思いを馳せるきっかけに、この本がなってくれるように祈っています。