光文社より発売中!
『競歩王』がいよいよ発売となりました。今日あたりから、順次全国の書店に並ぶ予定です。
発売直後にもかかわらず感想をくださった方もいて、本当に嬉しいです。
実際に競歩をやっている方も手に取ってくださっているようで、ありがたい気持ちが半分、競技に取り組んでいる人がどんな感想を抱くのか、戦々恐々しています。楽しんでいただけたら嬉しいです。
『競歩王』が生まれたきっかけ
『競歩王』の執筆にあたり、2017年ロンドン世界陸上 50km競歩 銅メダリストの小林快選手(新潟アルビレックスRC)に多大なご協力をいただきました。
そもそも競歩を題材に小説を書こうと考えたのは、光文社の担当編集(箱根駅伝予選会経験者)&編集長(ごりごりの市民ランナー)から「ぜひうちからスポーツ小説を!」と依頼をいただいたのがきっかけです。
「やるなら陸上競技かな~」
「長距離走もいいけどフィールド種目もいいよね~」
などと言い合っているうちに、「競歩」の名前が出てきました。
競歩
名前はよく知ってるし、どんな競技なのかも想像できる。なのに詳しいことは何も知らない。面白そうなのにイマイチよくわからない競歩という競技を深く知るために取材を依頼したのが小林選手でした。
右も左もわからない我々に、小林選手は競歩の面白さを一から教えてくださいました。
競歩のルールの基本は、
■常にどちらかの足が地面に接していること
(違反するとロス・オブ・コンタクトという反則になる)
■前に繰り出した足は、接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を伸ばしていること
(違反するとベント・ニーという反則になる)
この2つです。これを守ることで、競歩独特の不思議な歩き方ができあがります。
このルールに違反すると、審判員から注意や警告を出されてしまい、警告が3枚出されると失格になります。失格にならないようにフォームに注意しながら、20kmや50kmといった長い距離を歩くのが、競歩です。
その他にも小林選手からは面白い話をたくさん伺いました。
競歩は他の種目から転向してきた選手が多いこと。審判員がいる競技だから、普段の練習から「他人の目」に見られることが大事なこと。なのに指導者不足で独学で練習している選手が多いこと。審判員に警告を出されてからのフォームの修正能力の重要さ。長い距離を審判員にチェックされながら歩ききる精神力の強さ。
短い取材の中で、競歩の面白さを存分に知ることができました。
競歩では1kmを4分~4分半で歩きます。取材後に実践してみたのですが、私は走ってでも無理なんです、このペース。マラソンは1kmを3分前後で走るので、比べてみても競歩の速さがよくわかるかと思います。しかもフォームは固定です。気を抜くとロス・オブ・コンタクトやベント・ニーを取られます。
そしてその中で、選手同士の駆け引きが繰り広げられるのが競歩のレースです。
どうですか? このスポーツ、超面白くないですか?
「この面白さを小説で書きたい」と思い、『競歩王』は生まれました。
『競歩王』で競歩をメジャースポーツに!……というのはおこがましいですが、競歩の面白さが一人でも多くの人に伝わったら嬉しいな、と願っています。